航空と地球温暖化に関するセミナー~今後の排出削減目標と技術的実現可能性について~
日 時 平成22年2月18日(木)10:00~17:00
場 所 東京大学(本郷キャンパス)工学部2号館213号室
主 催 東京大学 航空イノベーション総括寄附講座・航空イノベーション研究会
後 援 ㈳日本航空宇宙学会、㈳日本航空宇宙工業会
プログラム
9:30-10:00 登録
10:00-10:10 開会の辞 -松本洋一郎/東京大学理事・副学長
講演
10:10-10:30 岡野まさ子/東京大学:航空セクターにおける温暖化ガス排出の現状と概要
10:30-11:00 Annela Anger-Kraavi/ケンブリッジ大学:2012年以降の国際航空政策について
11:00-11:30 Frank Wetzel/ドイツ環境省:EUにおける環境プログラム及び最近の研究動向(仮)
11:30-12:00 伊藤智明/昭和シェル石油(株):2050年までのエネルギーシナリオについて
12:00-13:30 昼食
13:30-14:00 岡井敬一・田口秀之・藤原仁志/JAXA:JAXAにおける脱化石エンジン研究開発の取り組みについて
14:00-14:30 今村満勇/㈱IHI:航空エンジンにおける環境性能向上への取組み
14:30-15:00 佐倉 潔/三菱航空機㈱:MRJ/環境にやさしい航空機の誕生
15:00-15:30 舩井康伸/JAL(究極のCO2削減フライト)の概要
15:30-15:45 休憩
パネルディスカッション
15:45-16:30 今後の目標達成に向けて (上記講演者のほか、田中鉄也/ICAO、鈴木真二・津江光洋・李家賢一/東京大学)
16:30-17:00 総括・閉会の辞 -鈴木真二/東京大学大学院工学系研究科航空宇宙工学専攻教授
開催報告
航空交通は、今後も引き続き成長することが見込まれており、航空セクターから排出される温室効果ガスの影響は看過できないものとなりつつある。こうした中で今後の排出削減目標と技術的実現可能性について議論するため、東京大学航空イノベーション総括寄附講座は、航空イノベーション研究会との共催により、2月18日(木)、工学部2号館213号室にて「航空と地球温暖化に関するセミナー」を開催した。
当日の「航空と地球温暖化に関するセミナー」は、積雪にもかかわらず200名近い参加者が集まる中、鈴木真二教授(工学系研究科、CAIR代表)の司会により開始され、開会の辞として、松本洋一郎理事(副学長)より、将来世代に取り返しのつかない大きな負の遺産を作り出さないために早急な対策が求められている旨の挨拶があった。講演では、岡野まさ子特任准教授より、本セミナーの議論の軸となる航空セクターにおける温室効果ガス排出の現状と国際的な議論の概要が説明された後、英国ケンブリッジ大学気候変動緩和研究センター(4CMR)上席研究員Annela Anger-Kraavi博士より、COP15での議論並びにEU排出量取引の概要と航空部門が含まれることによる経済的影響についての試算が紹介され、ドイツ連邦環境庁上席研究員のFrank Wetzel氏からは、EUにおける航空環境技術関連政策及び最近の研究動向が紹介された。昭和シェル石油(株)執行役員である伊藤智明氏からは、2050年までのエネルギーシナリオについて、持続可能なシナリオとそうでないシナリオが示された上で、食物供給に影響を与えない次世代バイオ燃料の開発状況などが説明された。
後半は、宇宙航空研究機構(JAXA)主任研究員の岡井敬一氏より、JAXAにおける水素エンジンや電動モーターなど脱化石エンジン研究開発の取り組みについて紹介があった後、㈱IHI航空宇宙事業本部民間エンジン事業部技術部長である今村満勇氏より、航空機エンジン開発における環境性能向上へのメーカー側の取組みが説明された。また、三菱航空機㈱プロジェクトマネージャー補佐の佐倉潔氏からは、2014年に就航予定であるMRJ(三菱リージョナルジェット)の優れた環境性能を中心に、機体メーカーとしての環境負荷軽減の取り組みについて紹介された。㈱日本航空インターナショナル運航部航路グループ副課長の舩井康伸氏からは、昨年10月に行われたアスパイヤーフライトの結果を紹介しつつ、よりリアルタイムに近い気象情報等を活用し、航空企業側と管制機関側とが協力することにより、究極のCO2削減フライトが可能となることが説明された。パネル・ディスカッションでは、上記講演者に加え、国際民間航空機関(ICAO)の田中鉄也氏、津江光洋教授(工学系研究科)、李家賢一教授(工学系研究科)を交え、鈴木真二教授の進行により、昨年12月に開催されたCOP15の結果やEUの排出量取引等、航空セクターにおける我が国や欧州の取組みを踏まえつつ、今後の排出削減目標は技術的に達成可能なのかについて議論が行われた。最後に、鈴木真二教授から、目標達成は技術的に実現可能であっても特に燃料については経済的に課題が多く、技術のみならず排出量取引のような政策的な枠組みが必要になり、総括寄付講座も学内の知の結集と海外も含む学外との連携によりその実現に向け日本のプレゼンスを高めたいとの閉会の辞があり、当日のセミナーは閉会となった。
事務局:東京大学総括プロジェクト機構航空イノベーション総括寄附講座
特任准教授 岡野 まさ子 特任研究員 中村 裕子
International Seminar on Aviation and Climate Change~ Emission reduction targets and technological feasibility ~
Date February 18th, 2010
Venue Room 213, Faculty of Engineering Bldg.7, the University of Tokyo
Organized by Center for Aviation Innovation Research and Aviation Innovation Study Group of the University of Tokyo
Supported by JSASS, SJAC
Objective As air transport is expected to grow continuously, the environmental impact from the GHG caused by the aviation sector becomes increasingly important. This seminar invites experts and researchers from Japan and Europe to discuss the technological feasibility of attaining emission reduction targets as well as future research directions on the issue. The outcomes from COP15 and recent measures in Japan and Europe will be shared for facilitating productive discussions.
Program
9:30-10:00 Registration
10:00-10:10 Opening remarks Yoichiro MATSUMOTO / Administrator; Vice president, the University of Tokyo
Speeches
10:10-10:30 Masako OKANO / the University of Tokyo: Current trends and overview of GHG emissions from the Aviation sector
10:30-11:00 Annela Anger-Kraavi / Cambridge University: Post-2012 policies for international aviation
11:00-11:30 Frank Wetzel / Federal Environmental Agency, Germany: EU’s Program on the environment and recent developments of research (tentative)
11:30-12:00 Tomoaki ITO / Showa Shell Sekiyu K.K. : Energy scenarios to 2050
12:00-13:30 Lunch break
13:30-14:00 Keiichiro OKAI / JAXA : R&D on de-carbonized engines at JAXA
14:00-14:30 Mitsuo IMAMURA / IHI : Improvements in environmental performance of aircraft engines
14:30-15:00 Kiyoshi SAKURA / MJET : MRJ/The birth of more environmentally friendly aircraft
15:00-15:30 Yasunobu FUNAI / JAL : Overview of ASPIRE flight ~the ultimate CO2 reduction flight~
15:30-15:45 Coffee break
Panel discussion
15:45-16:30 Moderator : Shinji SUZUKI / the University of Tokyo, Participants : Tomoaki ITO/Showa Shell K.K., Mitsuo IMAMURA/IHI Corporation, Kiyoshi SAKURA/MJET, Yasunobu FUNAI/JAL, Tetsuya TANAKA/ICAO Mitsuhiro TSUE and Kenichi RINOIE/ the University of Tokyo
16:30-17:00 Summary and closing remarks -Shinji SUZUKI / Professor, the University of Tokyo
Secretariat: Center for Aviation Innovation Research, the University of Tokyo
Project Associate Professor Masako OKANO
Project Researcher Hiroko NAKAMURA
Announcement: The 5th ITPU International Seminar “International Air Transport and Climate Change” will be held at Sanjo Conference Hall of the University Tokyo, February 19th, 2010. It will focus on policy aspects to this issue. For more information, please visit
[http://www.pp.u-tokyo.ac.jp/news/2010/01/news20100129.htm].
- Date
- 【終了】2009.12.9 14;00~
- Place
- 東京大学安田講堂
- Sponsers
法人/フランス航空宇宙工業会日本委員会、在日フランス大使館、川崎重工㈱、㈱計算力学研究センター、五甲商事㈱、全日本空輸㈱、三菱商事㈱、㈱日本航空、三菱重工業㈱、㈱フロムページ、ダッソー・システムズ㈱
個人/相原宏徳、桜井達美、戸田信雄、鈴木和雄、諏訪吉昭 (敬称略)
- Detail
-
【当日の様子はこちらをクリック】
航空イノベーション総括寄付講座(CAIR)
日仏合作グライダー100年記念講演会式典開催
100年前の1909年12月、フランス大使館付武官ル・プリウール、海軍大尉相原四郎、東京帝大教授田中舘愛橘の3名
が、第一高等学校構内(現在の農学部キャンパス)と上野公園でグライダーの牽引飛行に成功した。
これを記念して2009年12月9日、航空イノベーション総括寄付講座が事務局となり、
東京大学、在日フランス大使館、航空宇宙会(航空宇宙工学科同窓会)の共催により、
安田講堂において記念講演会と式典が開催された。
約500名の参加の中、岡野まさ子特任准教授(CAIR)の司会により開始され、開会の辞として、
濱田純一総長より田中舘教授の紹介と「大空へのチャレンジを果敢に試みた先駆者の存在と、
フランスとの古くからの絆も思い出しながら、次の時代に向けて大胆に飛翔していく覚悟を新たに
したい」との挨拶のあと、フローランス・リヴィエール=ブリス在日フランス大使館科学技術参事官
から「100年前の日仏の協力のように、新たな航空のコンセプトの創出に力をあわせてほしい」と
の挨拶があり、保立和夫工学系研究科長からは西洋化をめざした当時の大学とは別の意味で国際化を目標とした
バイリンガルキャンパス構想が紹介された。基調講演では、航空史家の村岡正明氏から日仏三名の出会いとその活動が説明されたあと、
GIFAS(フランス航空宇宙工業会)日本委員会のジャンポール・パラン氏とミッシェル・テオヴァル会長から航空分野における
日仏の交流史と、航空宇宙産業の活動状況等が紹介され、ブノワ・リュロー在日フランス大使館商務官からフランスの
航空科学関係大学での取り組みが説明された後、鈴木真二教授(工学系研究科、CAIR)から航空イノベーションの実現に向けた
国際連携の重要性が指摘された。
後半は、相原氏の孫にあたる相原宏徳氏、田中舘教授のひ孫にあたる松浦明氏を交えたパネル・ディスカッションが
日本航空協会の酒井正子さんの司会により進行した。その後、ダッソー・システムズのベルトラン・サンマルタン氏から
コンピュータモデルの航空機開発への応用に関して講演があり、CGによる当時の飛行の再現が公開され、
最後に航空宇宙工学科・専攻の学生により製作された10分の1サイズのグライダー模型による会場内のフライトが披露され、
五代富文航空宇宙会会長による閉会の辞により終了した。CGモデルと模型はリチャード・アンセル氏が当時の写真から再現した精密イラストを参考に製作され、当日は同氏も出席された。
同日、夕刻より、山上会館において東京大学、在日フランス大使館主催のレセプションが中村裕子特任研究員(CAIR)
の司会により開催され、江川雅子東京大学理事とフローランス・リヴィエール=ブリス参事官の挨拶の後、戸矢博道全日本空輸(株)
常勤顧問による乾杯があり、日仏関係者の懇談の宴が催され、
実行委員を代表してフランス側からミッシェル・テオヴァルGIFAS日本委員会会長と東大側から鈴木真二教授による挨拶によって
閉会となった。